大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第二小法廷 昭和31年(あ)2282号 決定 1960年3月02日

主文

本件各上告を棄却する。

理由

被告人百武平吉の上告趣意について。

所論は、事実誤認、単なる法令違反、量刑不当の主張であって刑訴四〇五条の上告理由に当らない。

被告人久原高次の上告趣意について。

所論は、事実誤認の主張であって刑訴四〇五条の上告理由に当らない。

被告人両名の弁護人坂本泰良、同鎌形寛之、同立木豊地の上告趣意第一点、第二点について。

所論は、原判決は憲法九二条の解釈を誤り地方自治法の精神を無視した違法があるというにあるが、実質は単なる法令違反の主張に帰し、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。(そして本件福岡県粕屋郡志免町においては以前より比較的大規模の工事の施行にあたっては、その円満な遂行を期する上から、町長は分掌事項上関連ある町議会議員の協力を求める慣例の存したこと、そのため本件工事の施行についても町長は町議会議長、同議長のほか分掌事項上関連ある議員として厚生委員会の委員長及び各委員などをもって協議会を組織し、入札業者の指名、入札方法の選定、敷入札の方法などにつき意見を求めることとなっていたこと及び右協力の一環として厚生委員会の委員が町長の選任により新築工事の監督の任務に当っていたことは、いずれも第一審判決認定のとおりである。それ故被告人百武平吉が第一審判決認定のとおり、右協議会において敷金額につき意見を述べること並びに被告人久原高次が新築工事の監督に従事することは、ともに町議会議員で且つ厚生委員としての職務に由来し、慣例上右職務と密接な関係を有する行為であると認められる。しかも右慣例が所論のごとく議決機関と執行機関との分離の要請上違法であるとまでは断定しがたい。従って原審が被告人らの本件行為につき各収賄罪の成立を認めた第一審判決を支持したのは、結局正当であって、所論の違法は存在しない。)

同第三点について。

所論は、事実誤認の主張であって刑訴四〇五条の上告理由に当らない。

同第四点について。

所論は、第一審判決挙示の証拠の任意性を云為するにあるが、原審において主張せられず、その判断を経ない事項であるばかりでなく、記録を調べても所論のように強制、脅迫等による任意性のない供述調書とは認められないから、採るをえない。

同第五点について。

所論は量刑不当の主張であって、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。

また記録を調べても同四一一条を適用すべきものとは認められない。

よって同四一四条、三八六条一項三号により裁判官全員一致の意見で主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 池田 克 裁判官 河村大助 裁判官 奥野健一)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例